不可侵ガール、夢幻
紺の空に似つかわしくない銀の髪が靡いて、瞳の黒が湖畔のように戦ぐ。白い頬に赤みはささず、上品そうな鼻梁も口元も、計算づくのように微笑みをつくりだして。
襟と袖、裾がひらひらした、白くて、如何にもって感じのワンピースがウザったい。
そういう、子。
「そんなんどうでもいいじゃん、ねえ」
細い手が私の腕を掴んで、引っ張った。
強い向かい風が急に吹いて乾いてしまう目を閉じる。たのしそうな響きが前から聴こえてくるくらい、空は静かで平坦。
細い手に引っ張られる狭間で、呼吸、とかしなきゃ、とか。
暇ないし。
「どうでもよくない!」
乾いた喉から発すると、風は灘らかに変化して、引く力も弱くなっていた。
「そっかあ、初めて会った、てことか。急にウザいなあって思ったら、うんうん、そういう系ね。めんどくさーい」
目を開くと景色は都会から遠ざかっていて、郊外のすこし暗い住宅街。銀の髪のその誰かは、独り言のようにスキップをして。
空いた片手で髪を払い除けて、溜め息を吐き出す。星は流れない。
「あんただと、流れないの?」
「んー?」
「星」
「アイツら気まぐれなのー」