不可侵ガール、夢幻
「私は違う」
「ああ。きみは自分で自分を捨てたんだ。だからぼくときみは初対面、はじめましての握手でもしてみるか?」
「しない」
「残念。きみの手はすきだよ、星より確かで」
ようやく笑みを広げたその顔は、はじめより凜とおとなびて映る。
銀の髪がみるみる短く頬を撫で、大きな黒い瞳は切れ長に帯び、白いワンピースは白いシャツと白いスラックス、纏う背丈は私より高い。
「あんたは……、性別を変えられるの?」
「なりたい姿でいるだけ。不変は飽きがくるからね」
微かな笑みで目を細めたそいつの、黒は今度は私に向いていて、 “ 不変は飽きがくる ” が回収されていった。
私が私だってことを面倒臭そうにわらった言葉、本当は私が私だってことに飽きずに済んだと示唆してたのかな、とか思考を巡らせてるのも思惑回されているようで気味悪い。
手が伸ばされる。
何だか恭しい、すこい酔ったような仕草。差し出されたてのひら、星が瞬く前に急がないと消えてしまうと思った。
思った。
「証明して」
掴んだその手を引っ張って、次は私が星を降らせる。色が様々なんてそんなことはないきらめきが空を覆うまで、私は帰れない。
笑顔が失せて、きょとんとまるい目をしたそいつに言えば、馬鹿かと問われた。ちがう。
見てみたくなった。知りたくなった。星がどれだけ気紛れか、夜はどれほど長いのか、絶えた日のこと、本当はない名前。