不可侵ガール、夢幻
知りたくなった。知らなくていいぜんぶ。
夜はまだ続くって言うなら。
「私は、悪いことなんて何もしてない。髪を染めた、派手な色。校則を破り捨てた。今まですごく頑張ってた勉強をやめた、1位じゃなくてもいいって思った。やりたくなかった習い事をやめた。父母の期待を躱した。本当の正しいを見てみたくなった。夜、楽観的になれる自由がすきだった」
星の一欠片の光が一面雫のように降りてきて、そばで瞬く。
「私、自分のこと捨てたくないなって思ってたの、本当だよ」
ぱち、と弾けた星の光がそいつの頬に触れて、色白の肌がすこし赤を差した。
息を呑んだ音が聞こえて、掴んでいた手のひらがみるみる小さく華奢になる。
黒い瞳は少女のようにおおきくまるみ、銀の髪はショートヘアに揃えられて、口元はきゅっと結ばれ、はじめよりずっとちいさな星を黒に落としたような、そんな微かな残光が宿った眼を瞬かせた。
「こんな夜をつくってしまって情けないほど、私って面倒臭い、し。だけど捨てたくない。なにもできない」
なにもできない、私の。何かしたいって正誤含んだ欲でも。夜を尊んだ昼アンチでも。
守れる自分の守る対象は捨てたくないっていつも心中で佇んでいるしそれでいてほしいって思う、死。
結局何が最善なのかも分からずに惑い迷い宵を過ごす気持ちで、御座形にしちゃった多々もいつか後悔するかもしれない。しないけど。
そいつは奥のほうできらめかせた星を閉じ込めて、スローモーションの銀髪を片手で起こした風に靡かせる。
目が合ったそのひとときを殺す強さが、無機質に息を潜めた。
「脆弱な自己愛が、いつかまたきみを捨てるだろうよ」