不可侵ガール、夢幻
星がぱちぱちと降りては弾けて、夜の黒もかたち無しに辺りをあかるくする。そいつの瞳はその為に星を宿し、寂寥をゼロにしながら冷たいその手で私の手を引いた。
「きみがね、一段階を踏むとぼくとは出会い直すことになってしまうんだ。まーた名前を忘れられてしまうし、きみには毎回何かしらの証明をされる。夜は長いねえ、ぼくはたのしみが増えてたまらない、たまらない、これはきっと無限で夢幻でやさしい欠片」
降りてきた星光が頬を掠めて、それらと一緒に上空からゆっくり落ちていく風は冷たくないのに。
繋いだ手だけが冷たくて。
微笑んだそいつは夢をみるような表情で私を見つめて、星を掬う。
「いつ出会うきみは、いつも夜空をすきなだけ掻き回して放って帰ってしまうんだ。ぼくらこんなに美しいのに」
掬った星を頬に寄せたあと、さらりと酸素に飾る仕草で浮かせたそいつの微笑みはどこか満足そうだった。
「自分で言うわけ?」
「だってうつくしいだろう? 事実を捻じ曲げて言うのは性分に合わない」
心外だ、とばかりに黒い瞳をぱっちりとまるくされて何となく腹が立ち、星を手に取ってそいつの顔面に投げつける。
「痛っ」
額に丁度良くぶつかった星をそいつは手のひらに乗せて眉を下げた。
「だ、大丈夫か? 痛かっただろう。……ねえ、きみ! この子が驚いてるだろ、すこし扱いが雑なんじゃないか!」