一線をこえたら




思い出した幼き日々を包むように。

私のコトバに動揺した識稀の、頬にふれて、キスをした。



1回目のときのように、わずかに唇をはなして識稀の反応をうかがうと、迷いながらも、どこか夢の中にいるような目で、ワタシをみていて。


その変化をたしかめるように、唇を重ねると、呼吸がふれた。

薄目をあけると、とろけていく、識稀の瞳。




「……ん、ふ」



自然ともれる吐息。


お互いの唇をしっていくたびに、熱は高まり余裕もきえて。……加速していく。



やわらかいあまさに誘われるように、小さく舌をのばしてみると、識稀のそれにふれて。


からめ合えば、いつのまにか識稀の下にいた。



長年私たちの間にあった家族という関係ではなく、オンナとして、識稀にみつめられていることに、身体中の熱がとまらない。


やさしく捕まれた手首から、識稀の血液がめぐってくるみたいで。

ドキドキと、狂ってしまいそうなほど。



ここから、もっと深く。隅々まで味わって、たしかめ合って、お互いさえも失うようなキスをして、乱れて、1つになって、はじけていく。


識稀に、抱かれる。

そう思うだけで、私は、なににだってなれる。




「……かや。おれ……」



「…大丈夫。わかってるから。

………安心して」




乱れる息のなかで、なにかを言いたそうな識稀が、ゆれる瞳の奥に、ホントウは誰をみてるかなんて、考えるのはこわいけど。




「……きて、しき」




沙夜さんじゃなく、私のなまえを呼んでくれただけで。


のばした私の手に応えるように、ふれて、つかまえてくれて。

こわれやすいものにふれるようにやさしく、手のひらへと口づけをくれるだけで、十分だった。









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