双子を身ごもったら、御曹司の独占溺愛が始まりました
 今、この瞬間に追いかけて会うことができたなら、きっと彼は運命の人。そんなロマンチックなことを考えていた。

 なんて独りよがりで身勝手な思いだろうか、運命に任せるなんて。

 努力しなくては望む未来を手にすることはできないと、バリスタになる夢を抱いた時に身をもって知ったはずなのに。

 本当に彼と親しくなりたいのなら、今日のように自ら動かないといけないのに。

 決めた、今度彼が店に来たらどんな些細なことでもいい、話しかけてみよう。そこからなにか始まるかもしれないし、彼に恋人がいるという事実を知って終わるかもしれない。

 でも今までのようになにもせずに、密かに想いを寄せているより遥かにいい。

 来た道を戻っていくと見えてきたカフェ。ドアの前で周囲を見回している背丈の高い人物に足が止まる。

「あっ……」

 思わず声が漏れる。それもそのはず、カフェの前にいるのは彼なのだから。

 呆然と立ち尽くしていると、私に気づいた彼は真っ直ぐにこちらに歩み寄ってくる。トクン、トクンと高鳴る胸の鼓動。
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