双子を身ごもったら、御曹司の独占溺愛が始まりました
 ちょうどその頃バイトを募集していて迷いなく応募。カフェでの仕事は大変だけれど、バリスタが目の前で珈琲を淹れるのを見て勉強することができたし、なにより接客が楽しかった。

 大学を卒業と同時にカフェに就職し、先輩に指導してもらいながら勉強中。今はテラアートを習っているところだけれど、なかなか先輩のようにハートやキャラクターなどうまく描くことができない。

 でも挑戦する毎日が楽しくて、幸せでもあった。よく会社を経営する父親が言っていた言葉がある。『夢中になれるもの、なりたいものを見つけた人生は幸せでしかない』と。まさにその言葉通りだと思う。

 そんな父親にはとても感謝している。ひとり娘にもかかわらず、こうして自分のやりたいことを認めてくれて、応援してくれているのだから。

 優しくて厳しい父親らしく、やるからには最後まで諦めずに夢を掴まなければ許さないとも言われたけれど。

 控室で皺ひとつない白のシャツに袖を通し、黒のVネックエプロンを付け、胸元に〝立花〟とかかれた名札を付けた。

 それから背中まである長い髪をうしろでひとつに束ね、最後に鏡で全身をチェックする。
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