双子を身ごもったら、御曹司の独占溺愛が始まりました
「ちょっと出てもいい?」

「うん」

 星奈に断りをいれて電話の相手を確認すると、父からだった。

「もしもし、どうしたんだ?」

『悪い、運転中だよな? 手短に話す。急な仕事が入って今会社なんだ』

「えっ! どういうことだよ」

 思いがけない話に大きな声が出てしまい、星奈は何事かと心配そうに俺を見る。

 そんな彼女に「大丈夫だ」と口を動かしながら顔の前で手を合わせ、父の話に耳を傾けた。

『朝、急に秘書から呼び出されて行ってみたら、尾上の銀行から融資額の変更の申し入れがあったっていうんだ。今、尾上に連絡を取っているんだが繋がらなくて、確認が取れないことには帰れそうにない』

「ちょっと待ってくれ、まさか……」

 そこまで言いかけると、俺より先に父が言った。

『私が家を出るタイミングで美野里さんがやって来た。星奈さんにこの前の非礼を詫びたいと言ってな。こんなことを考えたくないが、もしかしたら母さんとなにか企てているのかもしれない』

 やっぱり父も同じことを考えていたようだ。

『だから私が帰るまでどこかで時間を潰していてくれないか? 星奈さんにこれ以上我が家の醜態を晒すわけにはいかない』

「俺もそうしたいところだけど……」

チラッと車の外に目を向けると、いつ俺たちが来たことに気づいたのか、母と美野里が待ち構えていた。
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