双子を身ごもったら、御曹司の独占溺愛が始まりました
「よし、今日も一日笑顔で頑張ろう」

 気合いを入れて控室を後にした。

「いらっしゃいませ、三名様ですね。ただいまお席にご案内いたします」

 開店準備を終え、十一時のオープン時間を迎える前には、すでに数組のお客様が列を作っていた。
 順番に案内していき、一時間も経てば店内は満席状態。

 ランチの時間から十五時まではとにかく目も回る忙しさだ。やっと一息つけるのは、十六時を回った頃。順番に休憩に入り、学生や仕事終わりのビジネスマンなどを迎え入れる準備に取りかかる。

 就職してまだ三ヶ月。少しずつ仕事にも慣れてきたけれど、まだまだ学ぶことがたくさんあって大変。そんな日々の中、私にはひそかな楽しみがあった。

空いたグラスを下げて厨房に持っていくと、背後から肘で背中をツンツンされた。

「星奈、今日も来たよ。例の彼」

 興奮気味に言ってきたのは、大学時代の友人である飯塚公佳だ。彼女の指さす方向に目を向けると、すっかり指定席と化しているカウンター席にいたのは、公佳の言う〝例の彼〟。

「本当だ、三日連続で顔を見ることができて嬉しいな」
素直な思いを口にすると、親友の飯塚(いいづか)公佳は目を輝かせた。
「だったら今日こそ連絡先を聞いちゃいなよ! だってアルバイトしていた頃からずっと気になっていたんでしょ?」
「無理だよ、そんなの。絶対に無理!」
 首を大きく横に振って拒否しても、公佳は引き下がらない。
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