双子を身ごもったら、御曹司の独占溺愛が始まりました
　なんでも彼は私が休みの日、先輩が淹れた珈琲を飲んで「いつもと味が違う」と言っていたらしい。いつも淹れていた私が休みだということを伝えると、私が出勤のときは必ず私に淹れてほしいとお願いしていったらしい。

　それを先輩から聞き、思わず泣いてしまったほど嬉しかった。

　だけど私はなかなか自分から名乗り出ることも、お礼を言うこともできなかった。恥ずかしいというのもあったし、彼は見るからに大人の男性。

　着ているスーツはいつも皺ひとつなくて、身につけている時計も高級そうなもの。なにより彼は街ですれ違えば、女性なら誰だって振り返り見るほどカッコいい。

　身長は一八五センチほどありそうな長身で、短めの黒髪は爽やかな印象を持つ。切れ長の瞳に筋の通った高い鼻。少し厚みのある唇とどのパーツも完璧で〝カッコいい〟という言葉が一番似合う人だと思う。

　私はというと、身長は一六五センチと高いほうだけれど、目が大きいという特徴以外顔は至って平凡。スタイルがいいわけでもないし、本当にどこにでもいる容姿をしている。

　そんな私だからこそ声をかけられずにいる。きっと彼ほどの人なら女性は誰も放っておかないはずだし、私なんかを好きになってくれるはずないもの。

　だから最初はカフェで会えて、私が淹れた珈琲を美味しそうに飲んでいる姿を見られるだけで満足していた。
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