双子を身ごもったら、御曹司の独占溺愛が始まりました
「いつものブレンド珈琲でお願いします」

「かしこまりました」

 この二年間でわかったことは、彼は週に三回ほど決まった時間にカフェを訪れる。時には本を読んだり、仕事が終わらなかったのかパソコンを持参したり。閉店までいる時は軽食を注文することもある。

 でも決まって必ずその日によって組み合わせる豆が変わる、〝本日のブレンド珈琲〟だけは毎回注文されるんだ。

 厨房に戻ってオーダーを先輩バリスタに伝えると、例の客なら私に淹れるように言われた。
 ここのカフェでは、バリスタによってブレンドする珈琲豆が違う。それを目当てに来られるお客様も少なくない。

 ブレンドは数限りないパターンを作ることができるけれど、基本的にブレンドする豆の種類は三種類から五種類が主流。

 性質の似た豆を組み合わせて、ちょっとクセのある豆を入れることで味にアクセントをつける。
 次第に珈琲の芳しい香りが漂い始める。

 うん、いい感じ。味もばっちりだ。

 カップに注いで厨房を出ると、本を読んでいた彼が香りに気づいて顔を上げた。

「お待たせいたしました、本日のブレンド珈琲です」
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