双子を身ごもったら、御曹司の独占溺愛が始まりました
「かしこまりました」

 一礼をして去っていく矢田さんに〝ごめん〟と小声で謝った。
 母が俺に話したいことと言ったら、ひとつしかない。それがわかるからこそ憂鬱になる。
 それでも無視するわけにはいかず、先にリビングに入った母に続き俺もリビングに入る。

「座りなさい」

 向かい合うかたちで座るよう言われるがまま腰を下ろすや否や、母は俺に向かって深いため息を漏らした。

「優星、あなたちゃんと美野里(みのり)さんと会っている? 美野里さんはずっとあなたの帰国を心待ちにしていたのよ?」

「そんなことを言われても俺は困るだけだって、もう何度も言っているよな?」

 尾上(おのうえ)美野里とは、母親同士の仲が良いことから幼なじみのような存在だった。三つ下と年齢も近いことから幼い頃はよく遊んでいたが、それ以上の関係だと思っていない。

 大きくなるにつれて会う回数は減っていったし、年に数えるほどしか顔を合わせていない。
 しかし母親たちは違ったようで、昔からずっと俺たちを結婚させようと密かに話していたらしい。
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