月夜に君とナイショの話
~出会い~
「え、もう朝、?」
ありえないくらい酷い寝相で時計は既に8時を過ぎていた。
ホームルームは8時半。
家から学校までは電車と歩きで1時間。
どう考えたって間に合わない。
飛び起きる気力すらない。
それでも必死に考えた。
1時間目は現代社会。
この教科担当の先生なら出なくても多分バレない。
出席を取らないからだ。
しかも今日は、朝の集会がある。
朝のホームルームもきっと連絡事項のみで出席確認はしないはずだ。
勝った。これは勝った。
流石に布団の中でガッツポーズをせざるを得ない。
人は本当に焦ると寝起きでもこんなにも頭がフル回転するのかと少し感心をした。
ってそんなこと考えてる場合じゃなかった!
1時間目は9時50分に終わる。
最悪8時30分にここ出て43分の電車に乗れば間に合う。
急いで着替えて寝癖をとにかくアイロンで無理やりに伸ばした。
いつもならヘアオイルを付けるところだが今日は時間が無いから大人しく諦めた。
菓子パンのハムマヨロールを口に押し込み水で流し込む。
教科書は全て学校のロッカーだから、迷うことなく筆箱とイヤホン、モバイルバッテリーを鞄に詰め込みここを出る。
玄関で掃き掃除をしているおば様にはさも遅刻なんかしていないかのように微笑み
「行ってまいります」
と挨拶をした。
寝坊なんぞしたと聞いたら恥さらしだと怒られかねない。
「はい、気をつけて。」
流石に学校の投稿時間まで把握してないおば様はにっこりと笑みをこぼしそう返す。
見えないかもしれないけどこのおば様怒ると本当に怖いのだ。