本能レベルで愛してる~イケメン幼なじみは私だけに理性がきかない~
第一章
はじまりの朝
◼️プロローグ
「俺と“番”になる? 千帆」
「え……?」
放課後、誰もいない教室で、幼なじみの紫音は私の手を握りしめながら、色気のある瞳で私をじっと見つめてきた。
中性的で恐ろしく整った顔立ちに、少し長めの前髪から覗く半月方の瞳。真っ黒な髪の毛のお陰で、雪のように白い肌がより際立って見える。
「本当はこんな形で、言いたくなかったけど」
まるで芸術品のような顔をした幼なじみが、なぜか切なそうに顔を歪めている。
気まずい空気の中黙っていると、紫音は急に獣みたいな瞳に変わって、私の手首を掴んだ。
急に美しい顔がさらに接近して、紫音のサラサラとした前髪がおでこに触れる。
すぐにでも唇同士が触れてしまいそうな距離感。
心臓が爆発したみたいに高鳴っている。
「言ってなかったけど、十回キスしたら強制的に番になれるらしいよ」
「えっ、えっ、待って紫音……んっ」
問いかける前に、無理矢理唇を塞がれた。
甘い痺れが脳まで到達して、体に力が入らなくなっていく。
慌てて紫音の体をドンドン叩いてみるけれど、びくともしない。
むしろ私の後頭部をがっちりと大きな手で包み込んでくる。
数秒後、わざと音を立てて唇を離してから、紫音は恐ろしく艶っぽい声でこう囁いたのだ。
「あと八回」
紫音から感じる熱っぽい吐息に、ゾクリと全身が粟立ち、思考が停止していく。
ただの幼なじみの関係が、いったいどうしてこうなってしまったのか――。
幼なじみの色気にクラクラしながら、これから彼とどう接していくべきなのか、私は必死に頭を回転させていた。
◼️はじまりの日
今日、私は十七歳の誕生日を迎える。
人生で十七回目の誕生日に、まさかあんなことが判明するなんてーー、この時の私は思ってもみなかったんだ。
「おい、いい加減起きろ」
ピピピピ、という無機質な音が遠くから聞こえる。
いつも通り、やたらと容姿の整った幼なじみが起こしにくる朝がやってきた。
「うーん、もう少し、あと五分寝かせてー」
お隣に住んでいる幼なじみの紫音(シオン)とは、誕生日も高校もクラスも一緒の腐れ縁。
クラス替えがあってまだ間もないというのに、すでに二十人以上の女の子に紫音の連絡先を聞かれている。
というか、クラスメイトの女子全員に聞かれた。
「千帆(ちほ)の“あと五分”は全く信用ならない、起きろ」
「うーん、寒いよー、眠いよー」
なぜみんな、紫音と仲良くしたがるのか。
それは、彼は超ウルトラスペシャルな階級の人間、“α” (アルファ)だからだ。
この世界には、αとβ(ベータ)とΩ(オメガ)の三つの性がある。
αはとにかく人を惹きつける魅力を持った、超超完璧な人間で、数百万人にひとりしかいない神に選ばれし者。
βは一般人。多くの人がこの部類。私もここにいる。
Ωは絶滅危惧種とも言われているほど希少な存在で、高確率でαを生むことができる人種。
完璧なαである紫音は、成績優秀で眉目秀麗で、運動神経も抜群。おまけに家は超お金持ちの大財閥。
普段はフェロモンを撒き散らさないように薬を飲んでいるらしいけど、それでもオーラが出過ぎていてモテまくっている。
幼なじみだからかわからないけれど、私はその紫音のフェロモンとやらに当てられたことはないので、みんなが目をハートにしている理由が正直わからない。
だって紫音は紫音だし、何か特別な人間とは思えない。
「腹見えてんぞ」
「うーん、大丈夫……」
「わかった。着替えさせてやるから寝てろ」
「ふわぁ~、今なんて……?」
「俺と“番”になる? 千帆」
「え……?」
放課後、誰もいない教室で、幼なじみの紫音は私の手を握りしめながら、色気のある瞳で私をじっと見つめてきた。
中性的で恐ろしく整った顔立ちに、少し長めの前髪から覗く半月方の瞳。真っ黒な髪の毛のお陰で、雪のように白い肌がより際立って見える。
「本当はこんな形で、言いたくなかったけど」
まるで芸術品のような顔をした幼なじみが、なぜか切なそうに顔を歪めている。
気まずい空気の中黙っていると、紫音は急に獣みたいな瞳に変わって、私の手首を掴んだ。
急に美しい顔がさらに接近して、紫音のサラサラとした前髪がおでこに触れる。
すぐにでも唇同士が触れてしまいそうな距離感。
心臓が爆発したみたいに高鳴っている。
「言ってなかったけど、十回キスしたら強制的に番になれるらしいよ」
「えっ、えっ、待って紫音……んっ」
問いかける前に、無理矢理唇を塞がれた。
甘い痺れが脳まで到達して、体に力が入らなくなっていく。
慌てて紫音の体をドンドン叩いてみるけれど、びくともしない。
むしろ私の後頭部をがっちりと大きな手で包み込んでくる。
数秒後、わざと音を立てて唇を離してから、紫音は恐ろしく艶っぽい声でこう囁いたのだ。
「あと八回」
紫音から感じる熱っぽい吐息に、ゾクリと全身が粟立ち、思考が停止していく。
ただの幼なじみの関係が、いったいどうしてこうなってしまったのか――。
幼なじみの色気にクラクラしながら、これから彼とどう接していくべきなのか、私は必死に頭を回転させていた。
◼️はじまりの日
今日、私は十七歳の誕生日を迎える。
人生で十七回目の誕生日に、まさかあんなことが判明するなんてーー、この時の私は思ってもみなかったんだ。
「おい、いい加減起きろ」
ピピピピ、という無機質な音が遠くから聞こえる。
いつも通り、やたらと容姿の整った幼なじみが起こしにくる朝がやってきた。
「うーん、もう少し、あと五分寝かせてー」
お隣に住んでいる幼なじみの紫音(シオン)とは、誕生日も高校もクラスも一緒の腐れ縁。
クラス替えがあってまだ間もないというのに、すでに二十人以上の女の子に紫音の連絡先を聞かれている。
というか、クラスメイトの女子全員に聞かれた。
「千帆(ちほ)の“あと五分”は全く信用ならない、起きろ」
「うーん、寒いよー、眠いよー」
なぜみんな、紫音と仲良くしたがるのか。
それは、彼は超ウルトラスペシャルな階級の人間、“α” (アルファ)だからだ。
この世界には、αとβ(ベータ)とΩ(オメガ)の三つの性がある。
αはとにかく人を惹きつける魅力を持った、超超完璧な人間で、数百万人にひとりしかいない神に選ばれし者。
βは一般人。多くの人がこの部類。私もここにいる。
Ωは絶滅危惧種とも言われているほど希少な存在で、高確率でαを生むことができる人種。
完璧なαである紫音は、成績優秀で眉目秀麗で、運動神経も抜群。おまけに家は超お金持ちの大財閥。
普段はフェロモンを撒き散らさないように薬を飲んでいるらしいけど、それでもオーラが出過ぎていてモテまくっている。
幼なじみだからかわからないけれど、私はその紫音のフェロモンとやらに当てられたことはないので、みんなが目をハートにしている理由が正直わからない。
だって紫音は紫音だし、何か特別な人間とは思えない。
「腹見えてんぞ」
「うーん、大丈夫……」
「わかった。着替えさせてやるから寝てろ」
「ふわぁ~、今なんて……?」