本能レベルで愛してる~イケメン幼なじみは私だけに理性がきかない~
「ま、まま待って! 私は絶対βだよ、血液検査もしてるし……」

 私がΩになるだなんて、そんなこと今まで一度も考えたことがない。

 たしかにこの前十七歳になったばかりで、変化型のΩになるかどうかの境目を通り過ぎたけれど、そんなに変わったことは……。

 否定するためにぐるぐると思考を巡らせてみるけれど、キスをした瞬間の甘い痺れや、友人たちの言動、さっき手を握った時の感覚など、どう考えても心当たりが多すぎることに気づいた。

 それに、紫音のこの真剣な顔。嘘じゃないことは明確だ。信じられないけど、認めるしかない。

 わ、私、Ωだったの……?

「いいか。よく聞け。千帆は適当に勉強してたかもしれないから一応言っておくけど、これから三ヶ月に一度ヒートと言われる発情期が一週間ほどくる。その間絶対学校に来るな」
「は、は、発情期って……!」

 なんだか刺激的なワードが出たことに思わず恥ずかしくなったが、紫音は躊躇わずにスラスラと説明を続ける。

「発情期には、“番”(つがい)を持たないαだけじゃなく、その辺にいるβすら惑わす強力なフェロモンが出てる。だから誰にも会うな」
「え! その間、ラーメンも食べに行っちゃダメなの!? ラーメンだけじゃなく、発情期間にフォーティーワンで期間限定のアイスが出たらどうすれば……!?」
「発情期を回避する方法はある」

 ラーメンやアイスの単語を出した瞬間、紫音の目が一度死んだ魚みたいになった気がしたけれど、すぐに何かを言いにくそうに目を伏せた。

 誰もいない教室に静寂が流れ、私は固唾を飲んで彼の言葉を待つ。

「発情しないようにする方法はただひとつ。“番”をつくること」
「つ、番って……?」
「αとΩの契約関係みたいなもんだ。本能的な繋がりだから、恋人や夫婦関係以上にその威力は強く、死ぬまで解消できないとされている」
「し、死ぬまで……!?」

 ていうことは、死ぬまでその人と一緒にいなければいけないということ……?

 この年で信頼できるパートナーを見つけないと私はずっと発情しっぱなしってこと!?

 食べ物の心配をしている場合ではなかった。Ωの人生、ハードモード過ぎない……?

 途方に暮れ、私は思わずその場に頭を抱えてしゃがみ込む。そんな重すぎる契約引き受けてくれる人、全然思い当たらないよ……!

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