本能レベルで愛してる~イケメン幼なじみは私だけに理性がきかない~
「そりゃ切ないに決まってるでしょ。フェロモンのせいで千帆に好かれたって意味ないんだから」
「え……」
「まあでも、この際いいよ。俺以外の誰かが千帆を守ることなんて許せないし。千帆にはちゃんと自然に好きになってほしいと思ってたけど」

 少し残念そうに、紫音はそう言った。それから、「焦って無理やりキスしてごめん」とも。

 紫音の本音をようやく聞けて、私はすごく嬉しかった。だって、彼と同じ気持ちだってことがようやくわかったから。

 私はずっと、紫音と今まで通り一緒にいられたらそれでいいと思っていた。

 “番”という関係性にならないと、紫音のそばにいちゃいけないみたいに感じて、悲しかった。

 そんな義務的な関係、嫌だって。私は、紫音とそんな関係になりたくないんだって。

 もっと自然な気持ちで、そばにいたいのにって、そう思っていた。

 紫音も同じだったんだ。だからあの時、切なそうにしていたんだね。

「し、紫音」
「ん?」
「私が今紫音にドキドキしてるのは、フェロモンのせいなんかじゃないよ」

 ――昂る気持ちをぶつけるように、私は紫音に下手くそなキスをした。ものすごく勇気がいったけれど、これ以上に気持ちを伝える方法が見つからなかった。

 ちゅっという音が教室に小さく響く。

 これでキスは十回目。
 私は、紫音とだから、“番”になりたいって、思ったんだ。

 紫音は目をまん丸く見開いて、私を見つめたまま固まっている。

「こ、これで番になったんだよね……?」
「は……?」
「番になっても、ならなくても、私が紫音と一緒にいたい気持ちは変わらないよ」
「千帆……」
「わ、私本当は、紫音にキスされるのも、番になろうって言われたのも、嫌じゃなかった……」

 顔を赤くしながら、羞恥心マックスの状態で早口でそう伝えると、紫音は脱力したように私の肩に額を預ける。

「何それ、お前、ずる……」

 そんなことを小声でつぶやいて、再び私の体をギューッと力強く抱きしめる。

 私も幸せな気持ちのまま、紫音の背中に手を回した。

 私たち、これで番になったんだ。じわーっと実感がわいてきたとき、紫音は信じられない言葉を言ってのけた。

「まさか嘘がこんなに効くとは」
「え、嘘って何が?」
「キス十回で番になれるわけねぇだろ」
「……え?」

 ん? どういうこと!?
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