本能レベルで愛してる~イケメン幼なじみは私だけに理性がきかない~
 そんなこんなで、朝からとんでもない空気感の中、一日のスタートを切ることになった。





 お昼休みになると、速攻でタケゾーとかおりんに屋上へと連れ出された。

 タケゾーとかおりんには直接伝えようと思っていたのに、あんな形で知らせることになってしまい申し訳ない……と思っていたけれど、二人はお弁当そっちのけで、キラキラした目を私に向ける。

「ちょっと千帆! やっぱり紫音様と付き合ってたんだね! 末永く私たちとも仲良くしてね!」

「今度紫音様の寝顔の写真撮れたらちょうだい。僕待ち受けにするから」

「千帆がΩだったのも驚きだけど、そんなことより私たちは紫音様の番候補の友達ってことにアガったわ」

 斜め上すぎる第一声に、ズコーッとこけてしまいそうなほど、拍子抜けした。

 そうだった。二人は紫音のファン的な立ち位置であることを忘れていた……。

 何かを期待するような瞳に当てられ、私は少しだけ壁側に退く。

 かおりんとタケゾーは恍惚とした表情で紫音の素晴らしさをしばらく語ると、きゃっきゃっと楽しそうに紫音の隠し撮りの写真を見せ合っている。

 そんな、芸能人じゃあるまいし……。

 売店で売れ残っていたパンを食べながら傍観していると、急にかおりんがキッと私を睨んできた。

「そうだ千帆、そうとなったら取り巻きに舐められないように気をつけなさいよ。Ωだったから好きになってもらえたんだって陰で言われてるわよ」

「えっ、そうなんだ。でも実際そうかもしれないしなあ……」

「そんなわけないでしょ! 紫音様が名前覚えてるのこの学校であんたしかいないんだから!」

 シャーッと蛇のように怒るかおりんを宥めながらも、私は今朝の紫音好きのクラスメイトたちの様子を思い出していた。

 私を恨むように睨みつけていた女性陣は、紫音の熱狂的なファン?で、毎朝何か贈り物をしようとしては紫音に塩対応をされている。

 紫音の度がすぎる人見知り具合にも、いい加減呆れているから、今度塩対応しているところを見たら注意しなくちゃ。

 なんて思ってジュースを飲んでいると、タケゾーが急に私の頬をむにっと両手で挟んだ。

「ちゃんと危機感持ちなよ? 僕結構心配してるんだからね? 千帆はちょっと能天気でグズでのろまで考えなしなところがあるから……」

「タケゾーほとんど悪口だよそれ」

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