本能レベルで愛してる~イケメン幼なじみは私だけに理性がきかない~
「あの、紫音のためなんかで、こんな慣れないことするのやめない……?」

「なっ、なんかってあなた、紫音様のことをなんだと……!」

「だってこうやって揉めても、何も解決にならないよ」

「そっ、それは……!」

「無意味なことで慣れない喧嘩することないよ。ちゃんと話そうよ」

 三人は私の言葉を受けて、気まずそうに言葉を濁して、たじろいだ。

 そのまま握りしめた手を離さずに、私は彼女達の目を見て話を続ける。

 彼女達が紫音のことを想う気持ちは、きっとものすごく真っ直ぐで純粋なものだと思うから、ちゃんと向き合わなきゃって思ったんだ。

「今朝紫音が言った通り、私は番の仮契約を紫音と結んだ。でも、私は、少なくとも紫音のことを、フェロモン抜きでずっと大切に思ってきたから、結んだの。それは、あなた達と同じ気持ちだって、わかってほしい。Ωだから誘惑だけの関係だって、決めつけないでほしい」

「そっ、そんなこと言われたって……!」

「まあ、私と紫音はあくまで仮の契約だから、もし戦うなら正々堂々行こうよ。こんなことしてるの紫音に見られたら、あなた達の好感度に関わるからきっと損しかないよ。ほら、漫画だったらこういう場面をヒーローに見られてこっぴどく叱られて終わる展開でしょ⁉︎」

 ね?と説得を試みると、三人はなぜか目をうるうるとさせて、今にも泣き出しそうな顔になっていた。

 ん? それはいったいどういう反応だ?

 黙って彼女達の言葉を待っていると、ビンタをしてきた女生徒が悔しそうにこう言い放った。

「花山さんっていつもお腹空かせてぼうっとしてるだけかと思ってたから憎たらしくて、でも、うっうぅ〜、なんでそんな優しいこと言うのよ〜」

「あっ、私の印象そんな感じだったんだ⁉︎」

「紫音様は、ほんとにいつも冷たいから、たまに心が折れそうになるわ。まあ、顔がいいから許しちゃうんだけど、ちょっと塩すぎる時もあるのよ」

「あの人低血圧なだけだから、お昼食べた後とかに話しかけるといいかもよ」

「えっ、そうなの? いつも朝一番に話しかけて撃沈して一日を終えてたわ……」

「あの目で睨まれたら怖くて固まるよね」

 うんうんと頷きながら聞いていると、取り巻きさん達といつの間にか紫音の愚痴大会みたいなものが繰り広げられていった。

< 29 / 103 >

この作品をシェア

pagetop