本能レベルで愛してる~イケメン幼なじみは私だけに理性がきかない~
 なんだ、話せばちゃんとわかってくれる子達でよかった。

 ずいぶん上から目線で言ってしまったけれど、でも、私は自分が思ったことをちゃん伝えて、向き合わなきゃ失礼だと思ったから。

 勇気がいったけど、ちゃんと言葉にできてよかった。
 
 ほっとして笑っていると、三人は「今日のところは失礼してあげるわ」と言って、そそくさと校舎へ戻っていった。

 私はふぅと安堵のため息をもらし、裏庭に置いてあるベンチに座り込む。

 ふと顔をあげると、二階の渡り廊下の窓からこっちをじーっと見ている紫音を見つけた。

「あれ? もしかして見てた?」

 ベンチに座ったまま少し大きい声を出して問いかけると、窓を開けて頬杖をついていた紫音はうんと頷いた。

「ちょうど移動しようとしたら、千帆の姿が見えたから」

 なんだ、見られてたのか。ということは後半の愚痴大会も聞かれていたということか……⁉︎

 そ、それはまずい……! 怒る時の目が死んでて怖いとか、気分屋で機嫌が良かったり悪かったり激しすぎるとか、色んな愚痴を言い合ってしまった……!

「すぐ助けようと思ったけど、千帆の能天気さに任せた方が平和に終われそうだったからな。まあ、あの生徒たちがそんなに凶暴だとは思えなかったし」

「あれ、怒ってないの? 結構な愚痴を言ってたけど……」

「怒ってねーよ。ビンタされてた時はかなり心配になったけどな。お前、こういう時割って入られるのすごい嫌がるだろ。あ、あとで叩かれたとこは見せろよ」

 紫音は女の子に冷たいことはあるけれど、絶対に怒ったりはしない。そして、私が嫌がることをちゃんとわかってくれている。紫音のそういう優しさは、すごく好きだ。

 たしかにさっきの状況は、紫音が現れない方が事態が複雑にならなくて助かったし。

 なんて思ってると、紫音が突然申し訳なさそうな声で話を続けた。

「俺がαなせいで、お前のことこれからも何度か危険に巻き込むかもしれないな」

「うーん、どうなんだろうなあ……」

「そばにいたくてごめん。でも守るから」

 守るからと言い切る紫音に、不覚にも胸がキュンとなってしまった。

 さっきの取り巻きさん達のことは、全然危険とも言えないようなレベルのトラブルだったけど、紫音はこの先私に起こりうるもっと危険なことを、心配してくれている。

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