本能レベルで愛してる~イケメン幼なじみは私だけに理性がきかない~
周りの生徒は三条の容姿にざわついており、教師の声が聞こえなくなるほどだ。
ちらっと千帆の方を見てみると、さすがに三条のことを見ていたが、心ここに在らずな顔をしていた。まだ食べ物のことでも考えてるんだろう。
「じゃあ三条、席は真ん中の空いてる席に座ってくれるか」
「はーい」
なんて思っていると、三条が席の説明を聞いて、生徒たちのうるさいほどの歓声を浴びながら、スタスタと席へ向かう。……と思いきや、なぜか自分の席を通り過ぎ、千帆が座っている後ろの席に向かい始めた。
そして、千帆の机に手をついて、いきなり片方の手で彼女の顎を掴む。
「君、Ωだね? しかも結構かわいーね」
「……へ?」
「匂いで分かっちゃった」
俺は無意識のまま即座に立ち上がると、千帆に触れていた三条の手首を思い切り掴んでいた。
一気にシーンと辺りが静まり返り、まさに一触即発な空気が流れる。
何も言わずに三条を睨みつけていると、三条は片側の口角だけあげた。
「もしかして、君がこの学校唯一のα? さすが俺並にイケメンだねぇ」
「……千帆に触れたら殺す」
「殺すってそんな物騒なー。あ、もしかしてもう番の約束交わしてるの?」
「無駄口叩かずに席座ってろよ」
「はいはい、手首痛いから離して。大人しく席座るから」
睨みつけたままゆっくり手を離すと、三条は胡散臭い笑みを浮かべたまま、千帆の方に向き直る。
千帆は全く状況が掴めていないのかぽかんとした顔で、俺と三条の間で、キョロキョロと視線を泳がせていた。
「千帆ちゃんって言うんだね。これからよろしくね、特別な人間同士」
「と、特別……?」
馴れ馴れしく最後にそう言い放つと、三条は大人しく自分の席に座った。
予想していた中で最悪な状態になってしまった。
俺は威嚇するような視線を三条に向けたまま、その日を過ごしたのだった。