本能レベルで愛してる~イケメン幼なじみは私だけに理性がきかない~
「紫音お待たせー! どう? どう? 可愛いしかないでしょう!」
「紫音、待たせてごめん……!」
ドレスはオフショルダーで、千帆の白い肌が見えている。
俺は千帆の全部に釘付けになりながら、その場に棒立ち。
明らかに千帆の周りに、キラキラ輝くオーラが見えるし、全生き物の中で間違いなく一番可愛い。
いつも身だしなみはテキトーな千帆なのに、こうしてドレスアップすると普段隠してる可愛さが有り余るほど出てしまう。
「し、紫音……?」
恐る恐る問いかけてくる千帆の肩を、俺はガシッと掴んだ。
「ダメだ。この姿を他人に見せるとか、耐えられない」
「え?」
「料理ならこの部屋に取り寄せるから、千帆はここで待機し……」
そこまで言いかけると、ものすごい勢いで母に背中をグーで殴られた。
「何言ってんの? 可愛いものは沢山の人に見てもらわなきゃ、世のためにならないでしょう?」
母の静かな怒りを感じながら、俺はじーんと痛みが走っている背中を押さえた。
そうこうしてる間に母は「さあ行きましょう」と千帆を車まで案内して、歩みを進めている。
嘘だろ……。あんな姿の千帆を見たら、どんな人種だって耐えられない。
不安しかないまま、俺は仕方なく車に乗り込んだ。
パーティー会場は、伊集院家が経営する最もハイクラスなホテルだ。
一泊五十万から受け付けている高級ホテルを今日は貸しきり、盛大に開催する。
芸能人や政治家も集まる会場に、俺たちはなんとかたどり着いた。というか、たどり着いてしまった。
俺はげんなりとした表情のまま、ドレス姿の千帆をエスコートする。
「じゃあ千帆ちゃん、紫音、私はここで。お父さんと合流したらまた会いにいくわー」
母は父が迎えに来るまで待機するらしく、会場とは別にあるゲストルームへと向かった。
ひらひらと手を振ってエレベーターに向かう母を見送ってから、俺は念押しするように千帆に問いかける。
「千帆、ちゃんとフェロモン抑制剤は飲んできたんだろうな?」
「もちろん! 集中して食べたいし、ばっちり飲んできました!」
「…………」
親指を立てて自信満々な笑みを浮かべる千帆を見て、最高に不安になる。