官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「もう一年つきあってんのに、なんで泊めてもくれないの。ホントあいつわかんねえ」

 ガシガシと頭を掻く雄ちゃんの背中を、智雄さんがバシッと叩いた。

「痛ってぇ! なにすんだよ」

「そんなこともわかんねえからおまえはまだガキなんだよ。薫さんに相手にされてるだけありがたいと思え」

「うるせえよ、ガキで悪かったな」

 子供みたににぷうっと膨れる雄ちゃんを、素子さんは呆れた顔で眺めている。

「こっちは忙しいんだ。ぐだぐだ言ってねえでさっさと手伝え」

「ちぇっ、わかったよ」

 智雄さんに菜箸を渡され、盛り付けを任される。

「そんな気分じゃないんだけどな……」

 文句を言いながらも、煮物を綺麗に盛り付けていくから雄ちゃんはすごい。子供の頃から手伝っているから、厨房の仕事はお手の物だ。


 作業をするうちに雄ちゃんの気持ちも収まったかなと思っていたけれど、そうではなかったらしい。
 食事の配膳に行ったきり帰って来ないのでおかしいなと思っていたら、さっさと仕事を終えて常連のお客さん達と乾杯していた。

「すっげー、今日めっちゃ大漁じゃん」

「だろ? 雄ちゃんもどんどん食べな。って言っても作ってくれたのは智雄さんだけどな」

 賑やかな笑い声が食堂に響いている。

< 106 / 226 >

この作品をシェア

pagetop