官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「ああ、俺なりにちょっと頑張ってみた」

 貴斗を足先に乗せてブランコの真似事をしたり、ネットで調べて体を使った遊びをしてみたら、見事に夢中になってくれたらしい。

「わ、それじゃまた疲れちゃったね」

「ああ、またご飯食べながら寝ちゃうかもな」

「違う、貴裕さんのことよ」

「俺はこれくらい平気だよ」なんて言って笑っている。

「ママ、たかとおなかすいたー」

「じゃあ素子おばちゃんのところ行こうか」

「え、たかといやよー」

 貴裕さんと食べると言ってきかない。貴裕さんは困ったふうながらも、喜びが隠せないみたいだ。離れない貴斗を宥めながら、口元が緩んでいる。


 ふたりの姿に和んでいると、「時田さーん」と呼ぶ声がする。なんと雄ちゃんだった。

「時田さん、ほらこっちこっち!」

 手招きしたかと思うと、さっさと席を作り、貴裕さんを無理やり座らせようとする。

「ちょっと雄ちゃん、貴裕さん今から食事なのよ」

「一緒に食べりゃいいじゃん! ね、時田さん」

「えっ、ご一緒していいんですか?」

「もちろん! な、大歓迎っすよね」

「朝の男前じゃないか。いいよいいよ、一緒に飲もう!」

「美海、時田さんの分の料理こっちに運んで」

「ちょっと、雄ちゃんったら……」

 私の言うことなんて耳にも入らない様子で、雄ちゃんは手近にあった空きグラスにビールを注いで貴裕さんに持たせてしまった。

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