官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「さあさあ飲みましょー。はい乾杯!」

 ああなったら、もう私が何を言ったってダメだろう。貴裕さんは貴斗のことが気になるようだったけれど、私が「こっちは大丈夫だから」と言うと、腰を据えて飲みはじめた。すんなりみんなの輪の中に溶け込んでいる。

「貴斗、あっちでママとご飯食べようか。おにいちゃんはみんなとご飯食べるんだって」

 そう言うと、貴斗はイヤイヤと首を振った。

「やーよ、たかともいっしょがいい」

「貴斗の好きなちゅるちゅるあるよ。でも残念、ここじゃ食べられないんだよなぁ。お客さんには内緒のごちそうだから」

 貴斗の好物は智雄さんがばっちり把握していて、毎日三食のどこかに入れてくれる。貴斗は口をへの字に曲げて不満を現しつつも、「たかとちゅるちゅるいく……」と私の足に纏わりついた。

「偉いね、貴斗!」

 抱き上げて、厨房に連れて行く。厨房の中も一段落していて、調理に使った道具も全て洗い終っていた。

「ちょうどよかった。美海ちゃんと貴斗のご飯できたわよ。今日はもう上がって奥で食べてらっしゃい」

 今夜の賄いメニューは冷たいうどんと、新鮮な海の幸や夏野菜をたっぷり使った天ぷらだった。

「わぁー、ちゅるちゅるおいしそうねぇ」

 つやつやのうどんを目の前にして、貴裕さんのことはすっかり頭から飛んでしまったらしい。貴斗は目をキラキラさせている。

< 109 / 226 >

この作品をシェア

pagetop