官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「智雄さん、素子さんありがとう。お先にいただきます」

「ああ、ゆっくりしてきな」

 ふたりにお礼を言って、休憩室に料理を運んだ。貴斗を子供用の椅子に座らせ、食事用のエプロンをつける。大好きなうどんを前にして、貴斗は足をプラプラ弾ませて喜んでいる。

「さ、貴斗食べようか」

「はぁい、いただきまぁす」

 小さい両手を合わせて、ぺこりと頭を下げる。その様子が可愛くて、つい微笑んでしまう。

「ママなんでわらってるのー?」

「んー? だって貴斗が可愛いんだもん」

 私が言うと、貴斗は照れたのか、えへへと首を竦めた。

「おにいちゃんもたかとかわいいって」

「言ってたの?」

「うん、いっぱいかわいいっていったよ!」

 貴裕さんったら、すっかり貴斗にデレデレだ……。その光景が目に浮かぶようで、またひとりでに笑いがこぼれた。

 貴裕さんのことが気になったので、食事を終えた後、食堂を覗いてみることにした。

 素子さんに貴斗をお願いして食堂に顔を出すと、中はすっかり片付いていて、驚いたことに雄ちゃん達の宴会も終わっていた。どうやらみんな、部屋に戻ったらしい。

 帰る前に、貴裕さんの顔を見ておこう。そう思って、階段を上がる。

 藤の間のドアをノックすると、貴裕さんの返事が聞こえた。

「美海です。入ってもいい?」

「どうぞ」

 ひょっとして部屋で飲んでいるのかなと思ったけれど、いたのは貴裕さんひとり。貴裕さんは備え付けのローテーブルの上にパソコンを置いて、何やら作業をしていた。

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