官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「私は貴裕さんの体を心配しただけよ。貴裕さんって案外負けず嫌い?」

 茶化すように言うと、貴裕さんはコツンと私の頭を小突いた。

「当たり前だろ。そうじゃなきゃ社長なんてやってられない」

 ほんの冗談のつもりだけれど……。貴裕さんが身を置いているのは、そういう世界なんだ。きっと私の想像の範疇にないほど、厳しい世界なんだろうなと思う。

「ところで美海は明日は休み?」

「うん、そうだけど」

「そうか。実は雄介さん達に船釣りに誘われたんだ。明日は貴斗の面倒見られないなと思って」

「貴裕さん釣りなんてできるの?」

 押しの強い人達だから、断り切れなかったのだとしたら申し訳ないと思ったのだけれど。

「実は初めてなんだ。でも面白そうだと思って」

 意外にも乗り気らしい。

「そうね、せっかくここに来たんだから一回ぐらい経験してみるのもいいかも」

 どうせなら仕事のことは忘れて、いつもとは違う体験をしてリフレッシュして欲しい。いくら貴斗が可愛くても、ずっと面倒を見るのは大変だもの。

「それに雄介さんが」

「雄ちゃんに何か言われた?」

 雄ちゃんは私のことを心配してくれているけれど、あの性格だ。貴裕さんに何か余計なことを言ってないといいけれど……。

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