官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「大したことじゃないよ。魚釣り勝負をしようって言われた」

「何それ?」

 雄ちゃんは生まれも育ちもこの島で、海で遊んで育ってきたようなものだ。釣りも遊びがてら、小さな頃からやっている。そんな雄ちゃんと初心者の貴裕さんが釣り勝負? 勝負なんてやらなくても結果なんて目に見えてるのに。

「それ、雄ちゃんが言い出したの?」

「ああ、俺が美海に相応しいやつかどうか見極めるらしい。俺の方がたくさん釣れたら、美海をやるって」

「そんな、人を物みたいに」

 だいたい、なんで雄ちゃんにそんなことを決められないといけないの。

「……それに、貴裕さんに相応しくないのは私の方なのに」

 私がぽろっとこぼした言葉を、貴裕さんは聞き逃さなかった。

「美海が引っかかってるのってやっぱりそこなんだな」

「……何が?」

「ごまかすなよ」

 知らんふりしようとしたけれど無駄だった。少し厳しい目をして、貴裕さんが私を見る。

「ひょっとして、安藤から言われたことが今でも気になってる?」

「ううん、それはもういいの」

 当時はショックを受けたけれど、今さら腹を立ててもしようがない。それに、彼女が言い放った言葉は、正解でもある。それは私も受け入れている。

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