官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「なに?」

「ううん、船釣りに行く人向けに、智雄さんが特製のお弁当を作ってくれるの。だから楽しみにしててね」

「なんだ、美海が作ってくれるんじゃないの?」

「えっ、……貴裕さんみたいな人でも手作りのお弁当なんて食べるの?」

 そう言うと、貴裕さんは顔をしかめた。

「俺のこと、何だと思ってるの。手作りのお弁当なんて嬉しいに決まってるよ。それも、美海が作ってくれたものならなおさら」

 そう言って、貴裕さんは「あ」と声を上げた。

「……そういえば俺はまだ美海の手料理を食べたことなかったな」

「確かにそうだね」

 あるといえば、ラパンで市販のお茶を出したり、時間がある時に作ったハーブ入りクッキーを食べてもらったくらいだ。

「でも智雄さんのお弁当の方が、何倍も美味しいと思うわよ。それでもいいの?」

「ああ、俺は美海の作ったのがいい。美海さえ迷惑じゃなければ」

 なんの照れもなくこういうことを口にする貴裕さんに、私の方が照れてしまう。

「迷惑だなんて。……じゃあ、明日の朝持って来るわ」

「朝早いのに悪いな」

「平気。貴裕さんこそ早起きしなきゃいけないから、今日は早く休んでね」

「楽しみにしてるよ。おやすみ」

「おやすみなさい」

 互いに口にして、貴裕さんの部屋を出た。素子さんたちの部屋で待つ貴斗を迎えに行く。頭の中は、早起きして作るお弁当のことでいっぱいだった。

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