官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「素子さん、おはよう」

「あら、美海ちゃん来たわね」

 素子さんには、貴裕さんのお弁当は私が作るからと昨日のうちに伝えておいた。智雄さんは貴裕さんの分を抜いた数だけ、ひぐらし荘特製釣り弁当を作っているはずだ。

「これ、貴裕さんにこっそり渡してもらえる?」

「どうして? 自分で渡せばいいじゃない」

「それはいいの、恥ずかしいもん」

 素子さんに向かって私は慌てて首を振った。雄ちゃんや他のお客さんもいる前で貴裕さんにだけお弁当を渡すなんてなんだが照れくさい。

「時田さん喜ぶわね。きっとたくさん釣って来てくれるわよ」

「うん、貴斗のためにって張り切ると思う」

「あなたの喜ぶ顔だって見たいと思うわよ」

 そう思ってくれているだろうか。貴裕さんのことを思ってじわっと胸が熱くなる。

「素子さんお願いね。貴斗が心配だから帰るわ」

「ええ、ちゃんと渡しておくから安心して。今日はゆっくり休んでね」

 きっと顔までも赤くなっている。素子さんに気づかれるのが恥ずかしくて、私は早々にひぐらし荘を出た。


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