官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 おかずはほぼ貴裕さんのお弁当と同じで、ご飯は小さめのおにぎりにした。海苔やチーズ、ハムなんかを使って、貴斗のお気に入りのキャラクターの顔を描いたつもりだ。

「ママすごいねぇ。たべるのもったいないねぇ」

「貴斗嬉しい?」

「うれしい!」

 バンザイをして喜んでくれる。細かい作業は大変だったけれど、頑張って作った甲斐があった。

「ママ、えびもあるよー」

「うん、全部貴斗のだから、ゆっくり食べていいからね」

 貴斗はフォークでエビを上手に突き刺して、口に持って行く。ちょっと前まで私が取り分けて食べさせていたのに。私が手を貸そうとすると、「じぶんで!」と言って手伝いを拒否するようになったし、本当に子供の成長ってあっという間だな、と思う。

 きっと近いうちに、父親というものの存在にも気がつくだろう。貴裕さんのことをどう説明したらいいか迷っていたけれど、少しずつ話す方が貴斗も理解できるかもしれない。意を決して、私は口を開いた。

「ねえ貴斗、貴斗はパパって知ってる?」

「ぱぱ?」

「そう。聞いたことないかな」

 貴斗は「うーん」と頭を抱え、考え込むようなポーズをしている。保育園でお友達や先生から聞いたことはないのかな……。

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