官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「どこにする?」
浜辺へ降り、適当な岩場を探す。辺りを見回しながら、貴裕さんが聞いてきた。
「あ、あそこらへんはどうかな」
広くて平らな岩が海につき出している場所がある。岩もそう高くもないから、私と貴裕さんが側についていれば、危険なこともないだろう。
三人で岩の突端まで行って、腰を下ろした。
きっと貴斗は、そう時間の経たないうちに飽きてしまうだろうというのが、私と貴裕さんの予想だった。
本格的な道具は使わず、地元の商店でも売っている子供用の簡易釣りセットを用意してきた。万が一のことがあったら怖いので、念のため子供用のライフジャケットも着せる。これだけで貴斗には十分本格的に感じたらしい。
「たかとおさかなたくさんつるね」
貴裕さんの膝の上に座って、貴斗はやる気満々で釣り糸を垂らした。
「貴斗、海の中見えるか? 魚がいるぞ」
「どこ?」
私もふたりと一緒になって、海の中を覗いてみた。銀色の魚のお腹が、日の光にきらめいてゆらゆらと揺れているのが見えた。たぶんここからは見えていないだけで、この磯場にも数えきれないほどの海の生き物がいるのだろう。
「おさかな、つれるかな?」
「貴斗、釣りは我慢だって、雄介さんが言ってたぞ」
「がまん?」
「そう、魚がかかるまでじーっとしとくんだ」
「わかった!」
ゆったりと構えている貴裕さんに対して、貴斗は時折海の中を覗き込んでうーんと唸ったりしている。