官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「何を笑ってるんだ?」

 貴斗を腕に抱き、貴裕さんが私の隣へ体を寄せる。

「うん? 貴裕さんがいい顔してるなあって思って」

 スマホを傾け、画面を貴裕さんと貴斗に見せてみた。

「……なんか恥ずかしいな」

 自分でもこんな表情で貴斗を見ているとは思わなかったのだろう。貴裕さんは照れ笑いを浮かべた。

「たかととパパだね」

「うん、そうだよ」

「ママはどこ?」

 今三人でいるのに、写真の中に私がいないことが不思議だったのだろう。貴斗が首を傾げる。

「貴斗はママの写真もほしい?」

「たかとママとパパと三人でパシャしたい」

「パパもだよ。美海、俺が撮るからスマホ貸して」

「……はい」

 貴裕さんは貴斗を砂の上に下ろすと、私からスマホを受け取った。

「ほら、美海も貴斗もこっち」

 三人でしゃがんで体を寄せ合い、貴裕さんがスマホを持ち上げて、画面をこちらに向ける。

「ママはんぶんこよ」

 画面を見ると、私の顔の三分の一ほどが見切れていた。

「ホントだ。美海もうちょっとこっちに寄って」

 貴裕さんは私の肩を抱くと、ギュッと抱き寄せた。間に貴斗を挟み、在り得ないほど体が密着する。貴裕さんの体温を全身で感じて、鼓動が音を刻むのを感じた。

「撮るぞ」

「ママ、ぴーすよ」

 貴斗に言われ、顔のすぐ横でピースを作る。シャッター音が数回鳴って、「OK」と貴裕さんが言った。

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