官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「う……わぁぁん!」

 驚いた貴斗が、泣き声を上げる。全身びしょ濡れだし、尻餅をついたせいで手のひらや下半身は砂まみれだ。

「貴斗、大丈夫だからね」

 背中のリュックからタオルを出し、貴斗を覆う。

「俺が連れてくよ」

「ありがとう」

 貴斗を連れ、貴裕さんと駐車場へと急ぐ。もう時間がないし、こうなったら仕方がない。

「貴裕さん、ごめんなさい。このままうちに着いてきてもらってもいい?」

「……俺はいいけど、いいのか?」

 貴斗のことはともかく、私とははっきりとしない関係のまま、プライベートな場所に入ることを躊躇しているのだろう。

「ええ、貴裕さんがいてくれた方が助かるの」

「それなら」

「ありがとう」
 ぐずる貴斗をチャイルドシートに乗せ、貴裕さんも連れて私は自宅へ車を走らせた。


「ごめんなさい、散らかってて」

「いや、そんなことないだろ。俺の家の方が散らかってるよ」

 貴裕さんはそう言ってくれたけれど、朝食の食器はシンクにつけたままだし、貴斗のおもちゃも床に散らばっている。

「適当に座ってて。貴斗すぐお風呂入れるからね」

 さすがに疲れたのか、貴斗はくったりとしている。急いでお風呂に入れないと眠ってしまうかもしれない。

 部屋の片づけをする間もなく、私はまずお風呂にお湯を溜めた。

< 143 / 226 >

この作品をシェア

pagetop