官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「……ん、うぅ……」

 貴斗が寝ている和室から、うめき声のようなものが聞こえた。貴裕さんとふたり、弾かれたように立ち上がる。

 和室へ向かうと、貴斗は顔を真っ赤にして苦しそうにしていた。額には汗が浮かんでいる。

「……なんだ、どうしたんだ貴斗⁉」

「待って、貴裕さん」

 茶の間に戻り、体温計を取って貴斗の元へ戻る。計ってみると、貴斗の体温は三十九度を越えていた。

「熱が出てる。いつからだろう、気がつかなかったわ」

 帰った時は、すやすやと気持ちよさそうに寝ていたから、急に熱が上がったんだろう。

「美海、病院に連れて行こう」

 立ち上がろうとする貴裕さんを制して首を振る。

「朝にならないと無理よ。夜間診療をやっているところは、この島にはないの」

 貴裕さんが愕然とした顔で私を見た。

「それじゃ、いったいどうすれば……」

 まるで自分のことのようにつらそうな顔をして貴斗を見ている。手を握ってみると、熱くてうっすら汗ばんでいた。

「たぶん熱はこれ以上は上がらないと思う。ちょっとつらそうだから、熱さましを入れてみる。あと体も冷やしてあげなきゃ」

「俺はどうしたらいい?」

「用意してくるから、貴裕さんは貴斗のこと見ててくれる? あと汗をふいてあげて」

「わかった」

 不安そうな貴裕さんに貴斗を任せ、私は用意のために台所へ行った。

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