官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 冷却シートを張ったり、保冷剤で腋を冷やしたり。少しでも貴斗が楽になるようにと、解熱剤も入れてあげる。汗でびっしょりだったので、貴裕さんに手伝ってもらって着替えもさせた。

 真夜中、なかなか熱が下がらない貴斗を見て、貴裕さんは「俺が変わってやりたいよ」とポツリと呟いていた。

 貴裕さんも一緒に夜通し看病してくれたおかげで、貴斗の熱は明け方には落ち着いてきた。貴裕さんは、ずっと起きて貴斗に付き添っていてくれていた。明け方になって熱が下がって安心したのか、私が気がついた時は、貴斗の隣で眠ってしまっていた。

 貴裕さんの手は、貴斗の小さな手に触れている。目の下には、うっすらとクマが浮かんでいるように見えた。

 思えば貴裕さんはこの島に来て、ずいぶんハードな日々を過ごしている。今日くらいはゆっくり休んでもらったほうがいいだろう。また東京に帰れば、エテルネル・リゾートの社長としての忙しい日々が待っている。

 ふと、和室の壁に貼ってあるカレンダーに目を留めた。

 日付が変わって、貴裕さんがこの島に来て今日で五日目だ。ここにいるのは一週間と言っていたから、一緒にいられるのはあと三日。彼と離れなければいけないことを、寂しいと思っている自分がいる。

 貴裕さんが来てくれてよかった。貴斗と三人で一緒の時間を過ごせて、夢のように楽しかった。

 この状況がずっと続いていけばいいと思えるようになったのは、間違いなく貴裕さんのおかげだ。彼が真剣に貴斗に向き合ってくれたから、そう思えたし、昨夜だって一緒にいてくれて心強かった。

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