官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 貴裕さんは、貴斗と三人で一緒に暮らそうと言ってくれている。貴斗のためにも、それが一番いいことだと思う。
 でも貴裕さんと一緒にいるためには、この島を再び出て行かなくてはいけないのだ。私は、島を二度も捨てることになる。

 素子さんや智雄さん、雄ちゃんにこれまでよくしてくれた島の人達。みんなを裏切ることになるような気がして、胸が痛んだ。


 和室と縁側を隔てる障子の隙間から、朝日が差し込んでいる。夜が明けたのだ。

 呼吸も安定しているし、貴斗はもう大丈夫だろう。でも熱がぶり返したらいけないから、今日は午前中のうちに診療所で見てもらおう。ひぐらし荘の仕事も、遅番に変えてもらわなきゃ。

 頭の中で、忙しく考えるけれど、寝ていないせいか、うまくまとまらない。今のうちに、少し寝ておこう。

 こんな形になったけれど、昨夜は家族三人で過ごす初めての夜だったんだな。なかなかに強烈で、きっと忘れないだろう。

 いつか遠い未来、この一日のことを三人で笑って話せる日が来ればいいな。そんなことを考えながら、私はいつの間にか眠りに落ちていた。

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