官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「あっ、そうか。そこまで考えてなかったな……。貴斗が食べられるものあるかな」

「ご飯も炊いてくれたんでしょ? 貴斗の分はおかゆにするわ。おかずも一応取っておきましょう。元気が出て来たら食べたがるかも」

 私が言うと、貴裕さんはホッとしたようだった。

 貴裕さんが作ってくれた朝食に、インスタントのお味噌汁をプラスして一緒に食べることにした。

「美味しそう、いただきます」

「どうかな。俺もいただきます」

 貴裕さんと向かい合って両手を合わせる。私が食べるからいいと言ったのに、貴裕さんは自分で潰れた目玉焼きを食べると言って譲らなかった。

「お腹に入れちゃえば一緒なのに」

「好きな子にはちょっとでも上手にできた方を食べさせたいものだろ?」

 何でもない顔をして、そんなことをサラッと言う。恥ずかしくて固まっていると、貴裕さんがちらりと私の顔を見た。

「食べないのか?」

「た、食べるよ」

 やっぱり、貴裕さんの態度は至って普通。わかっていて、やっているのか。それともこういうことが平然と言えてしまう人なのか。深く知り合う前に別れてしまったので、判断がつかない。

 もし私に意識させるためにわざとやっているのだとしたら……、効果は絶大だ。

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