官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 『パパの作ったごはん』の効果は絶大で、貴斗はそう時間をかけることなく朝食を食べ終えてくれた。おかげで午前中のうちに島の診療所で診察を済ませることができた。

「時間がかかるから、ひぐらし荘で休んでてよかったのに」

 ひとりで連れて行くから平気だと言ったのに、貴裕さんは診療所にもついてきてくれた。

「もう大丈夫だってわかってても、心配なんだよ」

 診療所の待合室で、膝の上に貴斗を座らせてそんなことを言っている。昨夜の貴斗の苦しんでいた姿が、軽くトラウマになっているのだそうだ。

 この先貴斗が体調を崩すことなんて数えきれないくらいあるだろうし、こればっかりは慣れてもらうしかない。

 貴斗はというと、いつもはあまり行きたがらない診療所も、パパが一緒だと楽しいようで、昨日の熱が嘘のように、元気におしゃべりをしていた。

 診察の結果、貴斗は軽い風邪だった。受付で会計を済ませ、薬を受け取って外へ出る。貴斗はずっと貴裕さんに纏わりついていて、今は手を繋いで歩いている。

「貴斗ちゃんとお薬飲めるのか?」

「のめるよ!」

「本当か?」

 揶揄いまじりの貴裕さんに、貴斗は「たかとおりこうさんだもん!」とぷうっと頬を膨らませている。

「じゃあお昼ご飯食べたら、パパとお薬飲もうな」

 この後も、貴裕さんは貴斗と一緒にいるつもりなんだろうか。

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