官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「貴裕さん、昨日の今日でさすがに疲れてるでしょ? 一度ひぐらし荘に帰ってゆっくりしたら?」

 私が言っても、貴裕さんは首を振る。

「それは美海だって一緒だろ。しかも午後から仕事だし。俺は貴斗を見てるから」

「でも……」

 病み上がりの貴斗には悪いけれど、私が仕事をしている間は、ひぐらし荘の休憩室で休ませて、様子を見るつもりでいた。病後児保育なども充実していないこの島では、手が空いている人が子供を見るしか方法がない。今までもそうしてきた。

「美海、俺はいつまでお客さんなの?」

 車の前で貴斗を抱き上げ、私をジッと見据える。大事なことを話すとき、いつも貴裕さんはこういう顔をするのだと、この島で再会してから気がついた。

「美海は俺のこと、とっくに貴斗の父親として認めてくれてるって思ってたけど、俺の勘違いだった?」

「違う。決してそんなことは……」

「それなら、もう遠慮はなしだよ。貴斗、ママはこの後お仕事だから、パパと一緒にいよう。いいよな?」

「いいよ! たかとパパとあそぶ」

 貴斗は貴裕さんの首にギュッと抱き着いた。一緒にいれると聞いて本当に嬉しそうだ。

「熱が下がったばかりだから、暴れるのはなしだぞ。ひぐらし荘のパパの部屋でお薬飲んで、静かにしていような」

「はーい」

 どこまで理解できているのか怪しいところだけれど、貴斗は片手を上げて元気に返事をした。

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