官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「智雄さん、素子さん、急にシフトを変えてもらってごめんね。ありがとうございました」
ひぐらし荘に出勤してまず、休憩室にいたふたりにお礼を言いに行った。
「こういうことはお互い様だもの、いいのよ。貴斗は元気になった?」
「ええ、もうすっかり。軽い風邪だったみたい」
「そう、よかったわね」
素子さん達も貴斗のことを気にかけてくれていたようだ。一晩で熱が下がったことを言うと、ひどくならなくてよかったと安心していた。
「時田さんも一晩ついていてくれたのよね?」
貴斗が熱を出した時に、貴裕さんはひぐらし荘に連絡を入れて食事のキャンセルを伝えていた。
「うん。一晩中起きて、傍にいてくれたの。熱が高くて苦しそうな貴斗を見て、俺が代わってやりたいって言ってた」
慣れないながらも、懸命に看病してくれたこと、一緒にいてくれて心強かったことを話すと、素子さんも目を細めて聞いていた。
「時田さん、いいパパじゃない。ね、智雄さん」
智雄さんは、素子さんの隣で新聞を読みながらお茶を飲んでいた。私と素子さんの話を聞いていないかと思いきや、ちゃんと聞いていたらしい。
「そんなの、父親なら当たり前だ」
視線は新聞に落としたまま、ぼそりと言う。次の瞬間、素子さんが突然智雄さんの背中をばちーんと叩いた。