官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 貴裕さんに手を引かれ階段を上り切ると、小高い丘の頂上に、灯台を模した白い建物がある。これがこの島の展望台だ。

 建物の下の方にトンネル型にくり抜かれた入り口があり、中に入ると鉄製の階段がある。それを上ると、広い屋外型のフロアがあり、そこから、島の全方位を見渡せた。

 平日だからか、私達の他に観光客らしき人はいない。

「貸し切りだね」

「ああ、好きなだけこの景色を見ていられるな」

 島をぐるりと取り囲む海と、無数の島々。すぐ目の前に広がる濃いグリーンが、私と貴斗が暮らす諏訪島だ。

「あれ、ひぐらし荘じゃないか?」

「そうかも」

 海を見下ろす高台にある、二階建ての白い建物。そこから続く一本の道は貴裕さんと雄ちゃん達が船釣りに出かけた港に繋がっている。

「貴斗と三人で遊んだのはあそこ」

「ああ、岩場が見えるな」

「貴斗すっごく楽しそうだったね」

「俺も楽しかったよ。この数日、初めて経験することばかりで大変だったけど」

 そう言って、肩を竦めて笑う。それはそうだ、ある日突然、自分の子供が目の前に現れたのだ。戸惑うことばかりだっただろう。でも貴裕さんは、精一杯貴斗に寄り添ってくれた。

 そして、私にも。海を渡って会いに来て、これからはずっと一緒にいるよって、根気強く何度も何度も伝えてくれた。

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