官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「……俺、美海と貴斗に会いにきて本当によかった」

 展望台の柵に両手をついて、貴裕さんが隣に立つ私を見た。真剣な中にも優しさを湛えた瞳。彼が全身で愛しさを伝えようとしてくれているのがわかる。

「私も、貴裕さんにもう一度会えてよかった」

 一度は諦めて手放した幸せが、私の手の中に再び舞い降りようとしている。これまで経験したことのないような幸福感に私は包まれていた。


 だいぶ日が高くなったので、少し休んでお弁当を食べようということになった。

 ちょうど諏訪島側の反対の方に、休憩用の東屋がある。そこを目指して、貴裕さんと島の外側を走る遊歩道を歩いた。

 空のそう高くないところから、鳥のさえずりが聞こえる。見上げたら、さっきまで快晴だった空に、薄く雲がかかり始めていた。午後は雲が広がってくるのかもしれない。

「貴裕さん、あそこよ」

「ああ、案外立派なんだな」

 遊歩道の終着点に、屋根付きの東屋がある。中に入ると森からの涼しい風が吹いて、歩いて汗ばんだ肌を冷やしてくれた。

「貴裕さん、お弁当食べよう」

 保冷バッグの中からランチボックスを出す。

「すごい、うまそう」

 船釣りの時に渡したお弁当がオーソドックスなものだったから、今回はサンドイッチメインのお弁当にした。

 厚焼きの卵を挟んだもの、ハムときゅうり、貴裕さんの好物であるエビとアボカドを和えて挟んだもの、後は私が好きなキウイと生クリームのフルーツサンド。他に数点簡単につまめるおかずも隙間に詰め込んでいる。

 男の人にはボリュームが足りないかなと少し不安だったけれど、貴裕さんは満足してくれたようだった。

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