官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「ママ!」

 私を呼ぶ高い声にじわりと汗が滲む。園に迎えに行った時いつもそうするように、私を目がけて貴斗が突進してくる。足にしがみつくと、貴斗は私に向かって手を伸ばした。

「ママ、だっこ」

「……貴斗。おかえりなさい」

 同じ目線になるように腰を下ろし、貴斗を抱き上げた。

 なんてタイミングが悪いの。とっくに奥に行っていると思ってたのに。しかもよりによって、表の玄関から入って来るなんて。

「貴斗……?」

 小さな声で名前を呼んで、貴裕さんが大きく目を見開いた。次の瞬間、くしゃりと顔が歪む。ああ、やはり彼は貴斗のことを知っているのだ。

 こうして、ふたりを見比べると、本当によく似ているのがわかる。……そして、きっと今、貴裕さんも同じことを思っている。

 まだ何もわからない貴斗のことを気遣っているのだろうか、貴裕さんは不用意に貴斗に話しかけようとはしなかった。

「ママぁ」

 知らない人に見つめられて驚いたらしい。少し怯えた顔で、貴斗が私の首にギュッと抱き着いた。

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