官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
貴裕さんが乗り込んだ後は、フェリーが停泊している場所まで見送りに行った。
ボーっと低く重たい警笛を鳴らし、フェリーが離岸して行く。甲板に立っている貴裕さんの姿が見えなくなるまで、私と貴斗は手を振った。
「貴斗」
遠ざかるフェリーを見つめながら、愛しい我が子の名を呼ぶ。
「……うわぁぁああん!」
それまで私の体にしがみついて精一杯涙を堪えていた貴斗が、火が付いたように泣き出した。
「……えらいね、貴斗。パパが悲しくなるから、ずっと我慢してたんだね」
熱い体を抱き上げ、ギュッと抱きしめる。
「……たかと、がまんしたよ。だってたかとがなくとパパかなしいって」
貴斗も船釣りがしたいとごねて泣いた時に、貴裕さんが確かにそう言っていた。こんなに小さいのに、貴斗はちゃんとパパの言ったことを覚えていたのだ。だから一生懸命我慢した。
貴斗の優しさに、胸がいっぱいになる。いつの間にかこんなに優しい子に育ってくれていた。
「……パパはまた貴斗に会いに来るからね。貴斗もママと一緒にパパのところに会いに行こうね」
泣きじゃくる貴斗が落ち着くまで、私はその場で貴斗を抱きしめていた。