官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました

 その冬一番冷え込んだ十二月半ばの朝、私と貴斗、雄ちゃんの三人は諏訪島を発ち東京へと向かった。

「ママ見て! ちっちゃいおうちがいっぱい!」

 早朝に島を出て、フェリー、高速バスと乗り継いで疲れているかと思いきや、生まれて初めて飛行機に乗る貴斗はご機嫌だった。窓から見える景色に興奮したり、客室乗務員さんに「ぼくいまからパパに会いにいくんだよ!」なんて、自分から話しかけたり。

「貴斗すげぇな。コミュ力高ぇ」

 なんて雄ちゃんが漏らすほど、貴斗は大人にも物怖じせずにこやかに話しかけていた。

 昨夜は、久しぶりにパパに会えるのが嬉しくて、なかなか寝付けないようだった。そのせいか、今貴斗は私の隣の席で熟睡している。貴斗の寝かしつけに手こずって、私の方が若干疲れ気味だ。

「なんだ久しぶりに旦那に会えるって顔じゃないな」

「旦那って」

 まだ籍も入れていないし、貴裕さんのことをそう呼ぶのは早い気がする。

 そう、今回の最大の目的は、貴裕さんのお母様に会って結婚の許可をもらうこと、そして貴斗も連れて、貴裕さんと入籍を済ませることだった。

「帰って来る時は美海も人妻かあ」

「……まだわからないよ」

「なんでだよ。入籍してくるんだろ」

 でもそれは、貴裕さんのお母様に許してもらえたらの話だ。

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