官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 傍から見たら、私は家族の犠牲になったように見えるのかもしれない。でも全て自分の意志でしたことだし、もちろん、父や周りの人に指図されたわけでもない。

「美海は自分のことを後回しにして、人のために尽くすことに慣れきってるんだよ」

 ……そうなんだろうか。自分ではあまりピンと来ない。

「俺は絶対に薫と柚子のことを幸せにしてやりたいし、そのためだったらなんだってするよ。俺のこと頼りないって思ってるなら、頼りにしてもらえるよう今以上に頑張るだけだし。まあ、仕事で成果を出すのが、今の薫には一番効果的だからな」

 薫さんは雄ちゃんの上司だから、きっとそうなんだろう。今回の研修も、その一環ってことだ。もちろん、薫さんのためだけに仕事をしているわけじゃないだろうけれど。雄ちゃんは、自分のなりたい未来に近づくために、ずっと努力をし続けている。

「美海もさ、もっと欲を出せよ。絶対に時田さんの嫁になる、幸せになるって。自分が願わなきゃ、幸せになんてなれないし、おまえが幸せじゃなきゃ、貴斗や時田さんだって幸せじゃないんだぞ」

「雄ちゃん……」

「特に、時田さんな」

「貴裕さんが、どうして?」

 聞き返すと、雄ちゃんは呆れた顔で私を見た。ふーっとわざとらしくため息をつく。

「美海、やっぱなんもわかってないな。好きな女のことはデロデロに甘やかしてやりたいだろ。一緒にいてそれもできないなんて、男にとっちゃ拷問だろ」

「そんな、私はただ一緒にいられたら満足――」

「だから、それだよ」

 被せ気味に言って、雄ちゃんは私をジッと見据えた。

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