官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
その表情から、呆れているようにも感じる。けれど、どうして? 

「その謙虚さは美海のいいところだと思うけど、男からしたら寂しい時もあるんだぜ」

「そうなの……?」

 ピンと来ない顔で言うと、雄ちゃんはこれ以上相手していられないとでも言いたげな顔で私を見た。借りていたブランケットを鼻まで引き上げる。

「貴斗も寝たし、俺も仮眠取るわ。朝も早かったしな」

「うん、わかった……」

「おまえもちょっとは自分で考えろ」

 前髪とブランケットの隙間から私をじろりと睨むと、本当に眠かったのか、雄ちゃんはすぐに寝息を立てはじめた。


 羽田から東京駅まで移動して、雄ちゃんと別れた。

「俺の仕事はここまで~。じゃまたな」

「ありがとう雄ちゃん」

「ゆうちゃんありがと」

 貴斗が手を伸ばすと、雄ちゃんは軽くタッチをして返した。

「貴斗、パパにたっぷり甘えてこいよ。また年末な!」

 年末年始は寮が閉まってしまうので、一度島に帰省するらしい。駅の改札をくぐって、雄ちゃんの姿が見えなくなるまで、貴斗と手を振って別れた。

「さ、パパに会いに行こうか。貴斗大丈夫? 疲れてない?」

「うん、げんきだよ!」

 飛行機の中でぐっすり眠ったのがよかったのか、貴斗は元気いっぱいだ。

 貴斗と手を繋いで、駅の中を移動する。貴裕さんは仕事でどうしても抜けられず、彼の会社まで私達が出向くことになっている。長距離の移動と数回の乗り換えでこれ以上貴斗に負担をかけたくはなかったので、会社まではタクシーを利用することにした。

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