官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「ママどうしたの? 早くパパに会いに行こうよ!」

 立ち尽くす私の手を、貴斗がきゅっと握る。期待に膨らんだ瞳で私を見ている。

 今からこんなんでどうするの。私が貴斗を守らなきゃいけないのに、今からこんなに怯えていてどうするの。心の中で自分に喝を入れた。

「うん、行こう!」

 貴斗の手を握り返し、私はビルの中に足を踏み入れた。


 一階は広々としたロビーで、開放感のある吹き抜けになっていた。

「ママみて!」

 貴斗が指さした方に顔を向けると、壁際に大型スクリーンが設置してあり、世界中に展開しているエテルネル・リゾートのPR映像が流れていた。

「きれいね、ママ」

「そうね、行ってみたいね」

 貴斗も見たことのない雪景色や、南国の色とりどりの花々と一緒に、リゾートの情緒あふれる宿泊施設が映し出されている。

「お望みであれば、いつでも手配いたしますよ」

 突然声をかけられて驚いた。振り向くと、見知らぬ男性が立っていた。

「須崎美海様と……貴斗くんですね、初めまして。私は時田社長の秘書を務めております菅野と申します」

 さらりとした黒髪に、整った顔立ち。貴裕さんも背が高いけれど。ひょっとしたら彼よりも数センチは高いんじゃないだろうか。

 秘書というだけあって、見るからに切れ者といった感じがする。整った容姿も相まって、少し冷ややかな印象を与えるほど……。笑みを浮かべているけれど、同時に私達のことを観察しているような冷静さも感じて身が竦んだ。

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