官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「すざきたかとです!」

 大きな声で、貴斗が返事をした。

「ちょっと貴斗。すみません、大きな声出して」

 ざわついているロビーでばっちり注目を集めている。あまりにも場違いで恐縮してしまう。

「いえ、お気になさらず。貴斗くんえらいね。お返事上手だね」

 菅野さんはくすりと笑うと、貴斗の頭をくしゃりと撫でた。

 笑うと、ぐっと雰囲気が柔らかくなり、菅野さんの印象はかなり変わる。少しだけ緊張がほぐれた気がする。場を和ませてくれた貴斗に感謝だ。

「社長は電話応対中なので、代わりに私がお迎えに上がりました。ご案内しますのでどうぞ」

 私が引いていたキャリーバッグまで持ってくれようとする。

「あっ、荷物は自分で」

「須崎様にそんなことをさせたら、私があいつから殺されます」

「えっ、殺⁉」

 いきなり物騒な言葉が出て来て驚いてしまう。

「私と社長は、いわば幼馴染みのようなものなんです。腐れ縁とでもいうか」

「……そうなんですか!」

「ええ。いっそのこと、腐れきって切れてもいいくらいなんですが」

 なんて、冗談とも本気ともつかないことをサラッと言う。幼馴染みっていうくらいだし、貴裕さんとは気心の知れた仲っていうことなのかな。

「さあ、行きましょう。社長がお待ちかねです」

< 184 / 226 >

この作品をシェア

pagetop