官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 菅野さんの後に続いて、エレベーターの中に入る。着いたのは地上十五階の、役員専用フロアだった。

「こちらです」

 見るからに立派なドアの前に立ち、菅野さんがノックをする。

「社長、須崎様をお連れしました」

「入ってくれ」

「パパだ!」

 菅野さんがドアが開けると同時に、貴斗が中に飛び込んだ。

「パパ!」

「貴斗、いらっしゃい」

 貴斗が走り寄ると、貴裕さんが床に片膝をついて両手を広げる。貴裕さんの胸に勢いよく飛び込んだ貴斗を、貴裕さんはギュッと抱きしめた。

「会いたかったよ、貴斗」

「ぼくも~、さびしかったんだよ!」

 貴斗は貴裕さんの首に抱き着き、離れようとしない。貴裕さんの仕事が忙しくてしばらくは電話をするだけで、会えてはいなかったのだけれど、貴裕さんの電話攻勢はしっかりと効いているようだ。

「久しぶりだね、美海」

 優しく微笑まれ、胸が高鳴る。貴斗だけじゃない。久しぶりに会えて嬉しいのは、私も同じだった。

 ……私も、貴裕さんに会えなくて寂しかったんだ。

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